自己分析が必要なのは、学生ではなく採用側。

多くの企業の人事部門で今、会社説明会の内容を企画検討中だと思いますが、流行しているので『どんなグループワークをしたらよいか』ということが、その主なテーマになっているようです。飽きさせない、印象的な説明会にするために一定の効果はあって、だからいいグループワークを作ることも大切だと思いますが、『会社の説明をどのように行なうか』について、もっとしっかり考えたほうが良いというのが私の見方です。

今も昔も変わりばえしないのは、“長々と会社概要・事業内容を説明する”会社の多いこと。学生が聞いてようが、聞いていまいがおかまいなしで、会社の説明する会社が本当に多くあります。長々と・・というのは、感覚ですがじっと聞いているのがしんどくなってくる時間、話す人にもよりますが30分を超えてくるような時間でしょうか。

企業理念や経営方針、事業の内容、商品やサービスの紹介、業界の状況や今後の見通し、どういう歴史があって、拠点がどこにあって、どんな人がいてどんな風に頑張っているか、求める人物像や処遇制度の概要・・・などについて順を追って、事前知識のない学生達に説明していこうとすると、30分や40分などすぐに経過してしまいます。まったくリアリティのない話を聞かされるわけなので、説明する側にとっては“すぐ”に経過する時間でも、ほとんどの学生にとっては“まだ終わらないのか・・”でありまして、だんだんと集中力が低下し、意識が飛んで、眠くなって・・・というのが定番です。

「分っているけど、“会社説明会”なんだから“説明”しないわけにはいかんでしょう。」ということかもしれませんが、こちらが望むような人材の関心を引き付け、選考に進んでもらうという目的からは、逆のことをやってしまっている可能性が高いと言えます。

採用の上手な会社は、この「会社の説明」の部分に十分こだわって考えています。例えば、「当社で働くことの魅力は何か」「当社の強みは何か」「どのような人材に入社してほしいか」という3点に絞り込んで話す。逆に、採用サイトなどを読めば書いてあること、他社でも説明していそうなこと、入社動機を高める為に大して関係のないような会社の制度や決まりごと、学生の関心外のことや難しい内容を全て削ぎ落としてしまう。通り一遍の説明ではなくて、会社理解を促進するための象徴的なエピソードやストーリーを伝える、といったことを徹底して考えています。

グループワークをいくら面白いものにできたとしても、冒頭の凡庸な会社の説明が全体の印象を決定してしまっており、結局、選考に関わる数値は変わらなかったというケースも少なくありません。学生にとっても、どこに行っても同じような話を聞かされ、似たような顔にしか見えない会社群を前にして、それで選べというのも酷な話。選べないのは、自己分析が出来ていないからだなどと言うに至っては、ほとんど言いがかりです。

説明しようと思えばいくらでも出来るけれど、それを全部言うのでは芸がないし結果も出ません。学生が得たい情報は何か、理解できるレベルはどの程度か、こちらが望む人材が反応する内容とは、自社を端的かつ分りやすく伝えることができるポイントは何か、などを徹底して考えなければ、短時間で学生を引き付け、会社を何となく理解したような感じを持たせ、引き続くコーナーへの意欲をかきたて、面接を受けてみたいと思わせることはできません。

そのために必要なのは、採用側、人事部門の「自社分析」です。自社分析が足りないから、他社と同じような説明に終始し、中心的なメッセージのない内容となってしまう。聞かされる学生には、全体の雰囲気くらいしか記憶に残らないし、なぜ選考に進むかという動機や理由は生まれません。もちろん、自社の分析は容易ではないでしょうが、採用成功の最も大事なところに違いありません。

「自己分析の不十分な学生は就職活動に失敗する」とは必ずしも思いませんが、「自社分析の不十分な会社は採用活動に失敗する」というのは確実なことではないかと考えます。